私たちの体の中にいるミトコンドリアは、マラソンと深い関わりがある存在です。

マラソンを走っているときも、普段生活しているときも、このミトコンドリアがエネルギーを作ってくれるおかげで私たちは活動できています。

このミトコンドリアについて深く知ることで、マラソントレーニングがより効果的なものになり、レースを攻略しやすくなります。

まずミトコンドリアとは?

ミトコンドリアは、私たちの体を形作る細胞一つひとつの中に存在する、非常に重要な細胞小器官(オルガネラ)です。

よく「細胞の発電所」や「エネルギー工場」に例えられます。

主な役割:エネルギー(ATP)の産生

ミトコンドリアの最大の仕事は、食事から取り込んだ栄養(糖や脂質)と、呼吸で取り込んだ酸素を使って、細胞が活動するためのエネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)を作り出すことです。

これを「細胞呼吸」と呼びます。

特徴的な構造

ミトコンドリアは、内膜と外膜の二重の膜に包まれています。

クリステ

内膜が内側に複雑に折り畳まれたヒダ状の構造。表面積を広げることで、効率よくエネルギーを生産できるようになっています。

マトリックス

内膜に囲まれた内側の空間。ここには独自のDNAが含まれています。

独自のDNA(ミトコンドリアDNA)

ミトコンドリアは、細胞の核にあるDNAとは別に、自分自身のDNAを持っています。これは、大昔に別の細菌が細胞内に共生した名残(共生説)と考えられています。

また、このDNAは母親からのみ受け継がれる(母系遺伝)という面白い特徴があります。

つまり、ミトコンドリアのスペックは母親から受け継がれたものなのです。

ランナーとしてのスタミナを決めるのはミトコンドリアの数と機能

私たちランナーは、ミトコンドリアが作り出したエネルギーを使って走っています。

そのため、マラソンで記録を出すには、このミトコンドリアにできるだけ多くのエネルギーを作ってもらわなければなりません。

作り出されるエネルギー量は、ミトコンドリアの数と機能によって決まります。

ミトコンドリアの数=エネルギー工場の数

ミトコンドリア(エネルギーを作る工場)の数が多ければ多いほど、作られるエネルギーの量も増えるのは、容易に想像できます。

マラソントレーニングの優先順位としては、まずはミトコンドリアの数を増やすことから始めましょう。

ここで一つ注意すべき点は、作られたエネルギー100%走りに変換されるわけではないことです。走動作が非効率的だったり、無駄に力んでいたりすると、エネルギーロスが発生してしまいます。

そこで、どれだけ少ないエネルギーで走れるかを示す指標として「ランニングエコノミー(RE)」というものがあります。

ランニングエコノミーは、ドリルやトレーニングによって向上することが分かっています。

数や機能を向上させたら、産生したエネルギーを効率的に使えるようにしましょう。

ミトコンドリアの機能=エネルギー工場の生産スピード

ミトコンドリアの数を増やしただけでは、作られるエネルギー量はこれまでと大きくは変わりません。

それに加えて、機能を向上させる(エネルギーの産生速度を上げる)ことで、爆発的にエネルギーを産生できるようになります。

逆に言うと、数が少ない状態で機能を向上させても、そもそもの数が少ないので、あまり効果は得られないでしょう。

マラソンで結果を出すには、ミトコンドリアの数を増やしてから機能を向上させるのがセオリーです。

ちなみに、ミトコンドリアの機能を具体的に言うと、脂質代謝と乳酸代謝です。

数→機能の順に向上させることで、脂質と乳酸の代謝速度がトレーニング前とは比較にならないほどに高まります。

ミトコンドリアの代謝は有酸素ですから、結果的に1500m~フルマラソンまでの全種目で活かせる持久力が身につくのです。

ミトコンドリアの数と機能を向上させるには?

ミトコンドリアの数と機能を向上させるにはどうすればいいのでしょうか。

具体的には、以下の2種類のトレーニングによって向上させることが可能です。

低強度トレーニング(数を増やす)

ジョグやLSDといったゆっくり長く走るトレーニングによって、ミトコンドリアの数は増えます。

それだけではなく、毛細血管の密度・筋繊維の耐久性・心肺機能の向上といったメリットもあります。

レースから遠い時期は、このような低強度トレーニングを多く取り入れましょう。

高強度トレーニング(機能を向上させる)

閾値走やインターバル走といった高強度トレーニングによって、ミトコンドリアの機能は向上します。

レースが近づいてきたら、まずは閾値走から始め、それに加えてインターバル走を行うことで、機能がぐんと向上します。