「ネットや本で『胸を張って肩甲骨をグッと寄せて走れ』と書いてあったから意識しているけれど、なぜかすぐ息が上がる……」

「走った翌日、足よりも肩や背中、首周りがバキバキに凝って痛い」

ランニングやマラソンを本格的に始めよう、挑戦しようと決めて、フォームを一生懸命勉強している真面目なランナーほど陥りやすい罠。それが、「肩甲骨の寄せすぎ」です。

陸上界やフィットネス界では定番のように言われる「肩甲骨を引く」というアドバイスですが、これを意識するあまり、背中をガチガチに固めて走ってしまっている初心者が非常に多く見受けられます。

結論を言うと、肩甲骨は、自分の意識で「寄せる」ものではありません。腕振りに連動して「勝手に動く」のが大正解です。

意識して無理に寄せすぎると、上半身に無駄に負担がかかり、走れば走るほどエネルギーを無駄遣いする燃費の悪いフォームになってしまいます。

今回は、肩甲骨を寄せすぎることで発生する2つのエラーと、そのロックを解除する脱力法を解説します。

あさ

今回紹介するのは、私がいつも走り出す前に実施しているフォーム改善法になります。

毎回の練習の前に取り組むと、徐々に正しく脱力できるようになりますよ!

肩甲骨を寄せすぎると起きる「2つのシステムエラー」

良かれと思って胸を張り、肩甲骨を中央に寄せた瞬間、体内ではあなたの走りを邪魔するエラーコードが走り出します。

エラー①:肺が大きく膨らまなくなる「呼吸バグ(酸欠)」

肩甲骨を中央にギュッと寄せると、背中の筋肉(僧帽筋や肩甲挙筋)が過剰に緊張して固まります。

人間の身体は、背中側がガチガチに緊張すると、連動して胸の周りを囲んでいる肋骨の籠(胸郭)の柔軟性が失われてしまう仕様になっています。

つまり、肺が物理的に大きく膨らむスペースがなくなってしまうのです。

その結果、走っている最中に深い呼吸ができなくなり、大してスピードを上げていないのに「ゼーゼー、ハーハー」とすぐに息が上がる酸欠デバフが発生します。

エラー②:骨盤との連動が千切れる「体幹バグ(足の裏の疲労)」

人間の身体は、走る時に「右の肩甲骨が後ろに引かれると、連動して左の骨盤が前に出る」というように、上半身と下半身がたすき掛けのバツ印のように連動して推進力を生み出しています。

しかし、肩甲骨を「寄せたまま」で位置を固めてしまうと、この上下のインフラ連携(連動システム)が強制遮断されます。

結果として、上半身の力を推進力に変換できなくなり、下半身(足の筋肉だけ)の力で地面を蹴って走るしかなくなります。

これが、「後半の劇的な足の売り切れ(失速)」を引き起こす原因になるのです。

【実践】ロックを解除して推進力を得る「脱力法」

力を入れるだけがフォーム改良ではありません。

サラリーマンのビジネス同様、無駄なプロセス(力み)を徹底的に削ぎ落とす「引き算のハック」が必要です。

上半身を初期化し、最も燃費が良い状態を作るための2つの方法を試してください。

方法①:スタート前の「肩ストン・すりすり」で初期化する

走る前に、上半身の力み(エラー)をリセットします。

力みの解除方法
STEP1
思いっきり両肩をすくめて耳に近づけるようにギュッと力を入れます。
STEP2
一気に力を抜いて「ストン」と肩を下に落としてください。
STEP3
手のひらを外側(前)に向け、腕をだらんと下ろします。

この「肩が下がり、胸が自然に開いた状態」が、あなたのマシンの上半身の初期位置(デフォルト設定)です。

肩甲骨を寄せる必要はどこにもありません。

方法②:意識の書き換え「みぞおちから生えた肘を、後ろに引くだけ」

脳内のコントロールパネルの意識を書き換えます。

今日から「肩甲骨を寄せる」という意識は捨ててください。

代わりに、「自分の腕はみぞおちから生えているとイメージし、リラックスした状態で肘を後ろに軽く引くという意識に変えます。

肘を後ろに引きさえすれば、人間の骨格の仕様上、肩甲骨はガチガチに固まることなく、滑らかに「勝手に内側にスライド」します。

これで、呼吸も骨盤との連動も邪魔しない、100%ノンストレスな効率的腕振りが完成します。

まとめ:美しいフォームとは、極限まで「サボった」フォームである

42.195kmという果てしない距離を走り抜くために最も必要なのは、「いかに筋肉に無駄な仕事をさせずにサボらせるか」というランニングエコノミー(燃費)の視点です。

「頑張って胸を張る」「意識して形を作る」というのは、マシンに無駄なプログラムを常時起動させてメモリを圧迫しているようなもの。

まとめ
  • 肩甲骨を意識して寄せると、胸がロックされて酸欠になる
  • スタート前に「肩ストン」で上半身をリセットする
  • 「肘を引く」だけで、肩甲骨は勝手に理想的に動いてくれる

上半身の不要なロックを解除し、もっとラクに、もっと深い呼吸で、涼しい顔をしてどこまでも走っていけるスマートなランナーへと進化していきましょう!

編集後記

私もランニングを始めたばかりの頃、先輩ランナーから「もっと肩甲骨を使って走れ!」と言われ、真面目に背中をギューっとすぼめるようにして走っていました。

その結果、走った後はいつも首と肩がガチガチに凝り、まるで重いリュックを背負って走ったかのような疲労感に悩まされていました(キツすぎて、走るのが嫌になりかけたこともあります)。

しかし、解剖学を学び、腕は「引く」ものであって肩甲骨は「勝手に連動するもの」だと知ってからは、驚くほど肩の力が抜け、呼吸が深くなりました。

ランニングにおける最大の美徳は「脱力」です。

皆さんもオフィスで仕事中、肩に力が入っているなと感じたら、ぜひ「肩ストン」を試して、走る時も仕事時もスマートに力を抜いていきましょう。

正しい脱力法を身に付けたら早速走ってみよう!

肩甲骨をリラックスできるようになったら、まずはジョグをしながら脱力できているかを確かめてみます。

上記の脱力法を意識しながら走り、無駄のないランニングフォームを身に付けましょう。

ジョグのやり方は以下の記事で解説しています。