解糖系と聞くと、短距離走を思い浮かべる方もいると思います。

しかし、実は800m〜ハーフマラソンといった中長距離走も、この解糖系が大いに関係しているのです。

今回は、マラソン(主に中距離)と解糖系がどのように関係しているのかについて解説します。

解糖系とは?

解糖系とは、簡単に言うと「糖を分解してエネルギーを取り出す仕組み」のことです。

この反応は、体の中にある細胞の細胞質基質で行われます。

​解糖系のメリット

酸素を必要とせず、酵素によって反応が進むため、素早くATPを作り出すことができます。

解糖系のデメリット

この反応の副産物として、ピルビン酸が生成されます。

このピルビン酸は、ミトコンドリアによって代謝されるのですが、ピルビン酸の代謝速度には上限があります。

ピルビン酸の生成速度が代謝速度を上回ると、ピルビン酸は一時的に乳酸となり、血流に乗り体中へと運ばれます。

この乳酸が血液に溜まると、血中の水素イオン濃度が高まり、血液が酸性に傾きます。

すると、筋肉の収縮が妨げられるため、体が動かなくなります。

400mのラスト100mで足が重くなるのはこれが原因です。

解糖系が機能する場面

解糖系は、瞬発力に優れているため、100m〜400mでメインで機能するのは、想像に難くありません。

しかし、短距離走だけでなく、実は800m〜ハーフマラソンといった中長距離走でもこの解糖系は機能しています。

これは、有酸素代謝では賄いきれないエネルギーを、解糖系のエネルギーで補っているからです。

一方で、解糖系の燃料である糖には限りがあるので、フルマラソンにおいてはなるべく解糖系は使わずに、脂質を燃料にする有酸素代謝を機能させる必要があります。

乳酸が蓄積するのはなぜ?

そもそもなぜ乳酸が溜まるようになっているのでしょうか?

これを理解するには、速筋繊維と遅筋線維について知る必要があります。

私たちの体にある筋肉は大きく分けると3種類に分けられ、速筋繊維・遅筋繊維・中間型繊維があります。

これらの繊維は筋肉の中で明確に分かれている訳ではなく、バラバラに点在しています。

速筋繊維

ミトコンドリアは少ないが、解糖系の酵素活性が高く、短時間に爆発的な力を発揮することに優れている。

遅筋線維

解糖系の酵素活性は低いが、ミトコンドリアを多く含んでおり、乳酸や脂質を有酸素的に代謝できるため、長時間弱い力を発揮することに優れている。

中間型繊維

速筋繊維と遅筋繊維の特徴を兼ね備えた筋繊維。解糖系の酵素活性が高く、ミトコンドリアも多く含むため、乳酸シャトルが高速で行える。爆発的な力を生みつつ持久力も兼ね備えている。

つまり、速筋繊維で蓄積したピルビン酸が乳酸に変わり、血流に乗って他の組織や遅筋線維のミトコンドリアに運ばれ代謝されるという過程の中で、血液に乳酸が溜まる訳です。

解糖系のデメリットを克服するには?

解糖系のデメリットを克服し、マラソンで活かす方法は3つあります。

①乳酸代謝速度の向上

解糖系で生成された乳酸を代謝する速度が向上すれば、高い強度を維持することができます。

②乳酸シャトルの速度向上

速筋繊維から遅筋繊維やほかの組織に乳酸が運ばれる速度が上がれば、乳酸が血液に留まっている時間が短くなるため、乳酸が蓄積しづらくなります。

①乳酸代謝速度の向上と②乳酸シャトルの速度向上は、すべての中長距離種目で恩恵があり、特にハーフマラソンの記録短縮に大きく影響します。

乳酸代謝や乳酸シャトルについて知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

③脂質代謝速度の向上

ミトコンドリアでの脂質代謝速度が向上すると、解糖系に頼らなくてもエネルギーを供給できるようになります。

脂質代謝能力の向上は、特にフルマラソンでの記録短縮に大きな恩恵があります。

解糖系の鍛え方

解糖系を鍛えるには、瞬発的な力を発揮するようなトレーニングが効果的です。

スプリントトレーニング

例)100m×10本 または 200m×5本

100~200mを全力に近い出力で走ります。レストは息が整うまで十分に時間をとります。

この練習は速いスピードを出すことが目的なので、レストはウォークで問題ありません。

レペティショントレーニング

例)200m×10本 または 400m×5本

200~400mを1500mのレースペースで走ります。レストは2~5分間とります。

速いペースをリラックスして走ることで、ランニングエコノミーも改善します。