「仕事が終わってからだと走る時間が足りない」「家事や育児で練習する時間がない」と、悩んでいる市民ランナーも多いのではないでしょうか。
今回は、月間走行距離を追わずにマラソンで結果を出す方法を解説します。

あさ
この記事は以下のような人におすすめ!
- 仕事帰りの短い時間の中で走っている人
- マラソン初心者
- ランニングを始めたばかりの人
月間走行距離が少ない人(100km前後)は、十分に走り込んでいる人(200〜300km)に比べてマラソンの記録は劣りがちです。
しかし、練習の「質」を高めれば、練習量が少なくても記録が出せるようになります。
仕事で忙しいサラリーマンや家事や育児で時間がない主婦、ランニングを始めたばかりの初心者でも、サブ4やサブ3.5を狙えますよ。
今回は少ない練習時間の中で効果を最大化するコツを解説するので、ぜひ取り入れてみてください。
そもそもなぜマラソンでは月間走行距離が重要なのか
一般的には、マラソンは月間走行距離が増えるほど記録が伸びやすいと言われています。
この理由は、月間走行距離が200km~300kmと増えてくると、20kmや30kmが相対的に短くなり、フルマラソンを安定して走れるようになるからだと考えられます。
私自身も、実際に月間走行距離を200km近くまで増やしたときには、60分のジョグが今までと比べて楽に感じられました。
月間走行距離の増加は、以下の3つの持久的要素に好影響を与えています。
①毛細血管の発達
フルマラソン完走にはおよそ2300〜3000kcalが必要ですが、糖質は1200〜1600kcal程度しか身体に蓄えておけません。
マラソンの途中で糖質を使い切ってしまうと、ハンガーノックを起こし、全く走れなくなってしまいます。
これがいわゆる「30kmの壁」の正体です。
マラソンでは、糖質をいかに節約できるかが鍵となります。
月間走行距離を増やすと、全身に酸素を届ける毛細血管の密度が高まります。
これにより、ミトコンドリアの脂質代謝能力が向上し、糖質の節約につながるため、マラソン後半でもペースを維持できるようになります。
②ランニングエコノミーの向上
走る動作を繰り返していくうちに身体が動きを学習し、より少ないエネルギーで走れるフォームが自然と身につきます。
無駄な力を使わずに走ることで、同じペースでも今までより疲れにくくなるのです。
ある一定のペースで走るために、どれだけ少ないエネルギーで済むかを示す指標のことを「ランニングエコノミー」といいます。
ランニングエコノミーは、目標としているペース付近で走らなければ向上しません。
サブ4やサブ3.5を目標にしているランナーは、フルマラソンと普段のジョグのペースが近いため、月間走行距離が増えれば、自然とランニングエコノミーは向上していきます。
③足の筋肉・腱・骨の強化
ランニングでは、1歩踏み出すごとに体重の3〜4倍の衝撃が足にかかります。
これを4万歩以上繰り返すのがフルマラソンです。
たとえ心肺機能に余裕があっても、足に限界がきてしまえばペースは維持できません。
月間走行距離を増やすことで、足の筋肉や腱、骨が強化され、フルマラソンの負荷に耐えられるようになります。
月間走行距離に囚われてはいけない4つの理由
前述の通り、月間走行距離を増加による持久力向上は、マラソンにおいては大きなメリットです。
しかし、月間走行距離に囚われすぎると、かえってパフォーマンスの低下を招くことがあります。
①怪我のリスクが高まる
月間走行距離に囚われると、足に多少の違和感があっても、無理に走ってしまいがちです。
筋肉や関節の疲労が抜けないまま走り続けると、疲労骨折や腱炎を引き起こします。
私も、一時期は走行距離を稼ぐことが目的になってしまっていたことがありました。
最終的には怪我をしてしまい、一ヶ月の間、完全に休むことになってしまいました。
このように、マラソンでタイムを落とす多くの原因は、練習不足ではなく怪我による長期離脱です。
数字を気にするあまり、走れない身体になってしまっては本末転倒です。
②練習の質が低下する(ジャンクマイル)
月間走行距離のノルマを達成するために、距離を稼ごうとすると、楽に走れるジョグばかりになりがちです。
このような距離を稼ぐためだけの走りのことをジャンクマイルといいます。
マラソンの底上げには、心肺機能に負荷をかける高強度トレーニングも必要です。
しかし、距離を追おうとすると、疲労を恐れて質の高い練習を避けるようになり、結果として長い距離をダラダラ走れるだけでスピードは全く上がらない体になってしまいます。
距離を追うだけの練習では、マラソンで結果は出せません。
③回復(リカバリー)が疎かになる
走力が向上するのは、走っている最中ではなく、練習後の走っていない時間です。
トレーニングで壊れた筋肉は、休息中や睡眠中に、練習前よりも少し強化された状態で修復されます。
これを超回復といいます。
初心者にありがちなのが、走行距離を稼ごうとして毎日走ることです。
本来なら完全休養にすべき日も距離を稼ぐために走ってしまうので、体の修復が間に合わなくなってしまいます。
慢性疲労状態では、いくら走ってもパフォーマンスは向上しません。
④個人差や環境の変化の影響
ネットで調べてみると、サブ4は月間150〜200km、サブ3.5は月間200〜300kmなどといった目安が出てきますが、これらのデータはあくまで平均的なものです。
個々人の年齢、ランニング歴、体重、元々の筋力によって、同じ200kmでも身体にかかる負担は全く異なります。
そのため、無闇やたらに月間走行距離を増やすのは、得策ではありません。自分に合った月間走行距離を模索すべきです。
また、季節によっても必要な月間走行距離は変わります。
「夏場の200km」と「冬場の200km」では、疲労度が倍近く違います。
それらを無視して、毎月一律で同じ距離を目指しても、結果には結びつきません。
練習の質を高めることでマラソンの記録は伸ばせる
月間走行距離に適切に増やせば、マラソンの記録は向上します。
しかし、会社員や主婦などの走る時間が作れないランナーは、月間走行距離を稼ぐことが困難です。
練習の量が確保できないのであれば、練習の質で高めましょう。
実は、月間走行距離が確保できなくても、練習の質を高めることでマラソンの記録を向上させることができます。
私も、月間走行距離は100〜150kmくらいですが、練習の質を高めることで自己ベストを更新してきました。
質の高い練習でマラソンの記録が向上する理由は、以下の3つの要素から説明できます。
①VO2max(最大酸素摂取量)の向上
VO2max(最大酸素摂取量)とは、1分間に体重1kgあたりに取り込める酸素の最大量のことです。
VO2maxは、月間走行距離を増やすことでも、ある程度は向上します。
しかし、ゆっくりなジョグだけでは体が負荷になれてしまうため、そこまで伸びません。
質の高い練習で、酸素の供給能力・運搬能力・使う能力を狙って鍛えることで、VO2maxは大幅に向上します。
これにより、マラソンの巡航ペースが楽に感じられるようになり、タイムが向上します。
②LT(乳酸性作業閾値)の向上

ペースを上げていくと、あるポイントから急激に乳酸が体内に溜まり始め、足が動かなくなります。
この境界線をLT(乳酸性作業閾値)といいます。
後述するペース走(閾値走)では、一定時間維持できるギリギリのペースで走ることで、体が乳酸をエネルギーとして再利用する能力を向上させることができます。
結果として、LTが後ろにずれるため、以前ならハーフ(21.0975km)までしか持たなかったペースで、フルマラソンを走れるようになります。
③スピードの余裕度が上がる
例えば、フルマラソンを1kmあたり5分41秒(サブ4)のペースで走りたいとします。
もし、あなたの1kmの全力疾走が「5分00秒」だったら、レースペースは全力の90%近くになるので、すぐに息が切れてしまうはずです。
しかし、質の高い練習をこなし、1kmの全力を「4分00秒」まで引き上げておけば、レースペースの5分41秒/kmは全力の70%程度の力で走れるようになります。
つまり、スピードに「精神的・肉体的な余裕」が生まれるので、エネルギーの消費を抑えて、後半まで体力を温存できるようになるのです。
練習の質を高める4つの練習方法
ここまでの説明で、質の高い練習でマラソンの記録が向上する理由がおわかりいただけたと思います。
それを踏まえて、質の高いトレーニングを4つ、具体的に紹介します。
ここで1つ注意点ですが、以下のトレーニングは、5〜10kmのジョグを難なくこなせることが前提です。
負荷も高いため、ジョグで基礎体力を身につけてからでないと、体が耐えきれず怪我をする可能性があります。
ランニングを始めたばかりの方は、ゆっくりでもいいので、まずは5〜10kmを走れるようになってから、練習の質を高めていきましょう!
①時間走(60〜90分)
時間走は、距離ではなく「あらかじめ決めた時間」を走り続けるトレーニングです。
この練習は、時間が決まっているので、スケジュールに組み込みやすいメリットがあります。
そのため、週末などのまとまった時間が取れる日に行うのがオススメです。
LSD(ロングスローディスタンス):走りながらお喋りができるくらいのゆっくりとしたペースで、フォームは崩さず、長い時間動き続けることを意識して走ります。
- 毛細血管の発達
- 脂質代謝能力の向上
- 脚の耐久性が増し、フルマラソンを走り切れるようになる。
②ビルドアップ走
ビルドアップ走は、最初はゆっくり走り始め、段階的に少しずつペースを上げていき、最後は全力を出し切るようなスピードで走り終えるトレーニングです。
実は、多くのトップランナーや専門家が「市民ランナーがタイムを縮めるために、最も効果的で外せない練習」として挙げるのが、このビルドアップ走です。
ペース目安:6分20秒〜6分30秒/km
「ちょっと物足りないな、遅すぎるな」と感じるくらいの、おしゃべりが余裕でできるペースで入ります。ここで体を温め、後半でスピードを上げる準備をします。
ペース目安:5分40秒〜5分50秒/km
体が温まったら、少しずつストライド(歩幅)を広げ、心地よいと感じるスピードまで自然に上げていきます。目標とするフルマラソンのレースペースが目安です。
ペース目安:5分10秒〜5分20秒/km(ラスト1kmはさらに全力で)
ここが本番です。息がしっかり切れるレベル(5kmや10kmのレースを走るときのキツさ)まで一気にギアを上げます。ラスト1kmはハァハァと息が切れるところまで全力を出し切ります。
- マラソン後半の粘り強さが身につく
- VO2maxの向上
- 乳酸代謝能力向上によるLTの改善
- ペースコントロール能力の向上
③インターバル走
インターバル走は、速いスピードで走る「急走」とゆっくり歩いたりジョグをする「緩走」を交互に何度も繰り返すトレーニングです。
市民ランナーにとっては「最もきつくて過酷な練習」というイメージが強いですが、その分、短い時間で劇的に走力(特にスピードと心肺機能)を底上げできます。
やり方としては、「急走(1kmなど)+ レスト(休息)」を5本ほど繰り返すのが一般的です。会社員や主婦の方であれば、ウォーミングアップを含めても45分〜60分以内で終わる時短メニューです。
インターバル走は筋肉や関節への衝撃が非常に強いです。必ず2〜3kmの軽いジョグを行い、最後に50mほどの軽いダッシュ(流し)を2〜3本行いましょう。
ペース目安:5kmのレースを全力で走る時のペース(現在の全力の8〜9割)
100mダッシュのような完全な全速力ではなく、「1kmならなんとかこのスピードを維持して走りきれる」という絶妙にきついペースを維持します。
1km走り終えたら、すぐに完全に止まるのではなく、「ごく軽いジョグ」または「歩き」で息を整えます。時間は2分〜2分半(または急走にかかった時間の半分〜同等程度)です。完全に回復する前に、次の急走に移るのがポイントです。
「1km急走 + 2分レスト」のセットを5回繰り返します。3本目〜4本目が最もキツくなりますが、ここを踏ん張ることで心肺機能が爆発的に鍛えられます。5本終わったら、必ず軽いジョグで5分以上クールダウンをしてください。
- 1回拍出量増加によるVO2maxの向上
- スピードの天井の向上
- 大きなランニングフォームの習得
④ペース走
ペース走」とは、「あらかじめ決めた一定のスピード(目標ペース)を崩さずに、決めた距離や時間を走り続ける」トレーニングです。
マラソン本番の走りに直結するため、数ある練習の中でも最重要メニューの一つに挙げられます。
会社員や主婦の方であれば、平日の夜や週末のスキマ時間の「30分〜60分(距離にして5km〜10km程度)」で十分に高い効果を得られます。何度も長い距離を走る必要はありません。
- 距離の目安:5~10km(慣れてきたら週末に15~20km)
- ペースの目安:効果を狙う場合は、このまま60分は走り続けられるくらいのスピードで、目標とするフルマラソンのレースペースより、1kmあたり10~20秒ほど速いペースで行います。本番を想定する場合は、フルマラソンの目標ペースで走ります。
スタート直後は体がまだ慣れていません。最初の1kmは設定ペースより少し遅くても構わないので、リラックスして徐々にペースを合わせにいきます。
ここが肝心です。坂道や風があっても、1kmごとのラップタイムができるだけ均等(前後5秒以内)になるように、スマートウォッチなどで確認しながら淡々と刻みます。
きつくなってくると、あごが上がったり、腰が落ちたりします。あえて「背筋を伸ばす」「腕を後ろに引く」ことを意識し、同じペースを保ちましょう。
- LTの向上
- ペースコントロール能力の向上
- ランニングエコノミーの改善
練習の質を高めるコツ5つ
練習の際は、以下の5つのコツを意識してみてください。
①今日の練習の目的を明確にする
練習を始める前に今日の練習の目的(どの能力を鍛えるのか)を明確にします。
- 例:「今日は心肺に刺激を入れる日(インターバル)」「今日はレース後半の粘りを作る日(ビルドアップ走)」「今日は長時間動き続けることを意識する日(時間走)」
- 効果: 目的が決まっていると、途中でキツくなった時にも「いま何のために走っているのか」がブレなくなり、練習の効果が得られやすくなる。
②ウォームアップを動的ストレッチで時短する
短い練習時間の中で、最初の15分をダラダラとした遅いジョグ(ウォームアップ)に費やすのはもったいないです。
ただし、インターバル走だけは負荷が特段高いため、しっかりウォームアップするようにしましょう。
- コツ: 走り出す前に、家の中で股関節を大きく回す、肩甲骨を動かす、スクワットを10回するといった「動的ストレッチ」を3〜5分行います。
- 効果: 走り出しからすぐに心拍数と体温が上がった状態を作れるため、スタート直後から質の高い本番の練習に入ることができます。
③スマートウォッチやアプリの数値を目安にする
短い時間で狙った効果を出すには、自分の「感覚」だけに頼らず、心拍数やペースを客観的にコントロールするのが近道です。
- コツ: インターバル走なら「心拍数が最大心拍数の85〜90%まで上がっているか」、ペース走なら「設定した1kmごとのラップを刻めているか」を、ランニングウォッチ等でこまめに確認します。
- 効果: 負荷が軽すぎて効果が出なかったり、逆に追い込みすぎて潰れたりするのを防ぎ、短い時間で完璧に狙った負荷を体にかけられます。
④練習後すぐにリカバリーを始める
「質を高める」とは、強い刺激を体に与えて、それを急速に回復させることとセットです。時間がなくてジョグを15分短縮したとしても、その分をケアに充てた方がトータルの質は上がります。
- コツ: 走り終わったらすぐにプロテインやアミノ酸、または炭水化物を軽く補給し、固まりやすい「ふくらはぎ」や「お尻」を3分だけでもストレッチします。
- 効果: 疲労の抜けが圧倒的に早くなり、次に短い時間で走る時にも、100%のパフォーマンスで質の高い練習を迎えられます。
⑤本番に向けて期分けをする
期分けとは、練習の内容を時期ごとに分けて、本番に走力のピークを合わせる手法です。前半は基礎練習、後半は実践というように、レースに近づくにつれて特異的なメニューへと変化させていきます。
- 1~2か月目:時間走
- 3か月目:ビルドアップ走
- 4か月目:インターバル走
- 5か月目:ペース走
- 6か月目:調整、本番
6か月目の調整では、レースの1~2週間前に練習量を半分まで落として疲労を抜き、本番で力をすべて発揮できるようにします。練習の強度や頻度は変えないようにしましょう。
基本的には、平日は体力維持のためのジョグ(30分)、週末のまとまった時間が取れるときに上記の質の高い練習を実施するのがおすすめです。
- レースの日から逆算して練習を積み重ねることで、身体の調子が最高の状態で本番に臨めるため、マラソンの記録が向上しやすくなります。
まとめ:質の高い練習をこなしてマラソンで記録更新を狙おう!
今回は、練習時間が確保できないサラリーマンでもマラソンの結果を出せる方法を紹介しました。
以下に、今回の記事をまとめます。
- マラソンの記録は、月間走行距離が増えるほど伸びやすい
- 月間走行距離に固執しすぎると、かえって記録が悪化する場合がある
- 練習量が確保できなくても、練習の質を高めればマラソンで記録は出せる
- 練習を期分けをすることで、走力が最高の状態で本番を迎えられる
- 平日は30分のジョグ、週末に質の高い練習を実施する
フルマラソン本番に向けた期分けの流れは、以下の通りです。
- 1~2か月目に時間走で基礎的な走力の土台を作る
- 3~4か月目にビルドアップ走やインターバル走でレース後半の粘り強さや最大スピードを鍛える
- 5か月目にペース走で目標のレースペースを余裕を持って走れるようにする
- 6か月目に練習量を調整して疲労を抜き、本番に臨む
フルマラソンのサブ4やサブ3.5は、完走者のうち20~30%しか達成できない狭き門です。
しかし、会社員や主婦などの走る時間のない方でも、質の高い練習を正しい方法で積み重ねれば、これらの高い壁を突破できる可能性が限りなく高まります。
練習の質を高めるのが難しいときは、この記事で紹介した練習の質を高めるコツを見返してみてくださいね。
高い目標を達成したときの充実感は、何ものにも代えがたいものがあります。
ぜひ諦めずに挑戦し続けてください!
