「インターバルの4本目、5本目で猛烈な吐き気がして、設定タイムどころじゃなくなる」
「走り終えた後、トラックの横でしばらくへたり込んで吐きそうになっている…」
1000m×5本などの高強度トレーニングに本気で取り組んでいるランナーなら、誰もが一度はこの世の終わりような吐き気に襲われたことがあるはずです。そして、自分はメンタルが弱いから耐えられないんだと落ち込んでいないでしょうか。
その吐き気の原因は、あなたの心が弱いからではありません。あなたの身体の中で起こっている化学反応が限界まで引き出されている証拠です。
今回は、この不快な吐き気の正体を科学的に解き明かし、インターバル走をこなすための3つの方法を紹介します。
インターバル走の具体的な練習メニューについては、以下の記事を参考にしてください。
インターバル中の吐き気の原因は?
高強度トレーニング中に吐き気を催す理由は、主に2つ考えられます。
原因①:解糖系フル稼働による体内の急激な酸性化
乳酸が溜まると吐き気がするとよく言われますが、現代のスポーツ科学においてこれは少し不正確です。閾値走の記事で解説した通り、乳酸自体はエネルギー源であり悪者ではありません。
本当の原因は、乳酸そのものではなく、乳酸が作られるのと同時に大量に放出される水素イオンです。
インターバル走のように、以前紹介した解糖系を最大出力で回し続けると、体内に水素イオンが急速に蓄積していきます。
これにより、普段は弱アルカリ性(pH:7.35~7.45)に保たれている血液や筋肉のpHが、強い酸性へと一気に傾きます。
その結果、自律神経が乱れて胃や腸の動きが悪くなったり、脳の嘔吐中枢を刺激したりしてしまうのです。これが、インターバル特有のあの込み上げてくる吐き気の正体です。
ちなみに、血液や筋肉のpHが7.35未満の状態のことをアシドーシスと言い、血液中の酸性物質の増加による場合は代謝性アシドーシスと言います。
今回の吐き気は、運動によって血液中に乳酸が蓄積することで引き起こされるので、乳酸アシドーシスです。
原因②:内臓の強制シャットダウン(虚血状態)
もう一つの物理的な原因が、体内の血液の配分です。
キロ4分を切るような激しい運動中、酸素やエネルギーは足の筋肉に最優先で運ばれます。
その結果、全身の血液が駆動系(筋肉)に集中し、胃や腸といった内臓への血流は通常の20%以下まで激減します。
つまり、走っている最中のあなたの胃は、完全に機能がストップした「強制シャットダウン状態」にあります。
この状態で胃の中に消化しきれていない食べ物や水分が残っていると、胃はそれを消化できず、異物として外へ追い出そう(=嘔吐)とするのです。
また、ランニング後に下痢になった経験がある方もいると思いますが、これも高強度の運動によって腸の血流が低下することに起因します。
血流低下により腸の働きが悪くなり、水分を多く含む消化物を異物として排出しようとするため、下痢になりやすいのです。
嘔吐を回避し、設定タイムを出し切る3つの方法
原因が「体内の酸性化」と「内臓のシャットダウン」だと分かっていれば、具体的な対策を講じることができます。
方法①:当日の食事は3時間前に終わらせる
仕事終わりの夜にインターバルを行うサラリーマンランナーに多いのが、夕方の間食のタイミングです。
練習の3時間前までに固形物の食事は完全に終わらせ、胃を空にしておきましょう。直前のエネルギー補給は、消化に一切のエネルギーを使わない高濃度のスポーツジェル一択。
これだけで、内臓の虚血による吐き気は劇的に減らせます。
方法②:走り終えてすぐ崩れ落ちない
インターバルの1本を走り終えた瞬間、その場に膝をついて倒れ込みたくなりますが、これは逆効果です。
完全に動きを止めると、脚の筋ポンプ作用が失われ、筋肉に溜まった水素イオン(酸性物質)がその場に停滞してしまいます。キツくても、走り終えたらそのままゆっくりと歩き(または極小のジョグ)、動き続けてください。
血流を維持することで、以前解説した乳酸シャトルの仕組みが働き、酸性物質の処理と排出が圧倒的に早くなります。
方法③:クエン酸や重曹の戦略的摂取
陸上の短距離や中距離のガチ勢も使っている対策です。
練習の1〜2時間前に、クエン酸ドリンクや、少量の重曹(炭酸水素ナトリウム)を摂取しておくことで、あらかじめ体内のアルカリ緩衝能(酸性を中和する力)を高めておくことができます。
これにより、水素イオンが大量に発生しても、嘔吐中枢が刺激されるレベルまでpHが下がるのを遅らせることが可能です。
