「5km 20分切りのために厚底カーボンシューズを買った。確かにスピードは出るけど、練習のあとに決まって膝の裏やふくらはぎの上がピキピキ痛む……」

「薄底や普通の練習靴では痛くならないのに、勝負シューズを履いたときだけ膝裏が突っ張るのはなぜ?」

今やエリートランナーだけでなく、市民ランナーにとっても必須となった厚底カーボンシューズ。しかし、強い推進力の代償として、膝の裏の痛みに悩まされるランナーが後を絶ちません。

自分の脚力がまだ厚底に負けているんだと筋トレを始める前に、ちょっと待ってください。原因はあなたの筋力不足ではなく、シューズの構造とあなたのフォームのミスマッチにあります。

今回は、厚底シューズを履くと膝の裏が痛くなる科学的な理由と、その強力なパワーを正しくコントロールするためのフォームについて解説します。

膝の裏を痛めてしまう2つの原因

厚底カーボンシューズを履いて走ると膝を痛めてしまう原因は、2つ考えられます。これは厚底特有の推進力に起因します。

原因①:高いソールが生み出すオーバーストライド

厚底カーボンシューズの最大の特徴は、分厚いミッドソールと、前傾姿勢を強制的に作り出すスプーン状のカーボンプレートです。この構造により、普通に走るだけで勝手に一歩の幅(ストライド)が広がります。

シューズの力でストライドが無理やり伸ばされると、足の着地位置が体の真下ではなく、重心よりも大幅に前方になりやすくなります(オーバーストライド)。

重心より前で着地すると、膝がピンと伸び切った状態で地面からの強烈な着地衝撃を迎えることになります。

この時、走りにブレーキがかかると同時に、伸び切った膝が後ろにカクンと折れ曲がるのを防ぐために、膝の裏にある小さな筋肉(膝窩筋:しつかきん)や腱が引きちぎられるような負荷を受け続けるのです。

原因②:カーボンプレートの反発による腱の過伸展

ランニングエコノミーについての記事で紹介した通り、効率よく走るためには「足のバネ(腱の弾性エネルギー)」を使うことが不可欠です。

しかし、厚底シューズに内蔵されたカーボンプレートは、人間のアキレス腱や足裏のアーチよりも遥かに強い力で地面を押し返します。

シューズが勝手にバネを強烈に引き伸ばし、弾き出すため、自分の筋力や柔軟性のキャパシティを超えてアキレス腱やそこにつながる膝裏の組織が伸びすぎ(過伸展)を起こしてしまいます。

つまり、シューズの出す強大なパワーに、あなたの身体が耐えきれず、悲鳴を上げているのが痛みの正体です。

ランニングエコノミーについては、以下の記事を参考にしてください。

対策:厚底に乗せられるのを防ぐ3つの方法

厚底シューズという強力なツールに振り回されず、うまく使いこなすための3つの方法を紹介します。

方法①:意識的にピッチ(歩数)を上げる

ストライドがシューズの力で勝手に伸びるなら、私たちはピッチ(回転数)をコントロールする必要があります。


意識的に1分間の歩数を5〜10歩増やしてみましょう。足の回転を速くすることで、足が体より前に着地するのを防ぎ、自然と体の真下で衝撃を受け止められるようになります。これだけで膝裏のブレーキ痛は激減します。

方法②:着地はつま先ではなく足の裏全体で

厚底を履くとフォアフット(つま先着地)で走らなければと思いがちですが、無理につま先でガツガツ地面を叩くと、ふくらはぎと膝裏への負担が跳ね上がります。

イメージはミッドフット(足の裏全体でのフラット着地)。シューズの分厚いクッション全体を真上から踏み潰すように着地することで、シューズ本来の反発を安全に受け取ることができます。

方法③:膝下ではなくお尻で地面を押す

ふくらはぎや足首の力で地面を蹴ろうとするのをやめましょう。

主役にするのはお尻の筋肉(大臀筋)やハムストリングスといった体幹に近い大きな筋肉です。 股関節を使って上から下へ足を置きにいく感覚で走ると、膝裏にかかっていた局所的な負担を、大きな筋肉全体で分散して受け止められるようになります。