閾値走とは、簡単に言うと「スピード持久力を向上させるトレーニング」のことです。

閾値走を週1回やるだけで、マラソンのレース後半で失速しにくくなります。

この記事では、「閾値走のメリットとやり方」、「筆者が実際に閾値走をやってみた感想」を紹介します。

閾値走とは?ランナーが絶対にやるべきメリット

一般的に、閾値走は乳酸が急激に蓄積し始めるギリギリのペース(LT)で走るトレーニングとして知られています。

ダニエルズのランニング・フォーミュラでは、Tペースとして紹介されています。

T(Threshold:閾値)強度は、いわば心地よいきつさである。比較的速く走ってはいるが、そこそこの時間(練習なら少なくとも20~30分間)維持できるというペースだ。レースならば、休養をとってピーキングをすれば、60分間は維持できる。

ダニエルズのランニング・フォーミュラ 第4版(p.58)

上記の文言から、閾値走は「全力で1時間走ったときのペースで20分間走るトレーニング」だと解釈できます。

閾値走の目的については、以下のように紹介されています。

そして肝心の練習の目的だが、Tランニングを行うのは、血中の乳酸を除去し、十分に処理できる濃度よりも低く抑える能力を高めるためである。持久力の向上が目的だと考えておけば間違いない。つまり、若干きついペースで長時間持ちこたえる方法を身体に覚えさせる、ある特定のペースを保てる時間を延ばす、ということだ。

ダニエルズのランニング・フォーミュラ 第4版(p.58)

閾値走の定義が「全力で1時間走ったときのペース」であることから、10km~ハーフマラソンのペースで走れる時間を延ばすことが閾値走の目的です。

次に、閾値走を実施することで得られるメリットを見ていきます。

メリット①:マラソン後半の失速がなくなる

閾値走を継続していくと、マラソンの後半で失速しにくくなります。

これは、閾値走を継続することで、以下の2つの効果が得られるからだと考えられます。

  • 乳酸の処理能力向上により、血液の酸性化が抑えられる
  • 乳酸の産生低下=糖のエネルギー利用の低下により、糖を温存できるようになる

乳酸サイエンスにも、トレーニングにより「乳酸の産生低下」と「乳酸処理能力向上」がどちらも起こる(と考えられる)と記載されています。

トレーニングによる血中乳酸濃度の低下は、通常はこのように乳酸産生の低下と乳酸利用の上昇の両方でもたらされる.

乳酸サイエンス -エネルギー代謝と運動生理学-(p.93)

そこで持久的トレーニングによって乳酸の産生のみとか酸化による利用を中心とした除去のみが変化するのではなく、どちらも変化すると考えるのが妥当である.

乳酸サイエンス -エネルギー代謝と運動生理学-(p.93)

閾値走に「乳酸の産生低下と処理能力向上の効果がある」とは書かれていませんが、上記のトレーニングには閾値走も含まれるので、「閾値走によっても乳酸の産生低下と処理能力向上が起こる」と考えることができます。

そのため、マラソン後半で失速しがちで、まだ閾値走をやったことがない方は、継続することで記録更新の可能性が高まります。

実際に、筆者は閾値走を3ヶ月継続したことで10kmのタイムが4分短縮しました。(50分04秒→45分47秒)

詳しくは以下の記事で紹介しているので、ぜひご覧ください。

メリット②:たった20分で終わるため、忙しくても継続できる

閾値走の良いところは、たったの20分でトレーニングが終わることです。

ウォームアップやクールダウンを含めても30分で完了します。

会社員や主婦など忙しい方でも短い時間で取り組みやすいと思います。

会社員である筆者も、実際に仕事終わりに実施できています。

閾値走の正しい「設定ペース」の見つけ方

これだけメリットがある閾値走ですが、この練習は「ペース設定」が命です。

昔、知識が全くなかった頃の筆者が、適当なペース設定で閾値走をやったときは、ペースが速すぎてタイムトライアルのようになってしまったことがありました。

適正ペースからずれてしまうと、「乳酸代謝能力の向上、乳酸産生低下」という練習効果が得られなくなってしまいます。

LTは専門の機関で測定しなければ正確には求められないので、私たち市民ランナーは以下をペースの目安にします。

設定ペース①:最大心拍数の85~90%

ダニエルズのランニング・フォーミュラでは、Tペースの強度は以下のように示されています。

閾値ペースの強度を生理学的に表現すると、おおよそ85~88%VO2max(88~92%HRmax)である。これは十分にトレーニングを積んだランナーの場合であり、そうでないランナーだと80~86%VO2maxくらいだ。

ダニエルズのランニング・フォーミュラ 第4版(p.59)

私たち市民ランナーであれば、最大心拍数の85~90%の範囲が適正ペースだと思います。

最大心拍数は、「(最大心拍数)=220-(年齢)」という計算式が有名ですが、個人差がかなりあるため、全くあてになりません。

筆者の場合、24歳なので「220-24=196」ですが、ランニングウォッチで測定した実際の値は204でした。

インターバル走の後半で、追い込んだときの心拍数をランニングウォッチで確認するのが一番正確かと思います。

設定ペース②:VDOTのTペース

また、VDOTにてTペースを求める方法もあります。

最近の5km〜フルマラソンの記録がわかるのであれば、この方法が一番正確にペースを割り出せます。

複数のレースの記録がある場合は、その中で最もパフォーマンスが良い(VDOTが高い)ものを参考にします。

上記の例では、距離(5km)とタイム(21分00秒)を入力し、Threshold(閾値)に表示された4分28秒/kmがTペースとなります。

よって、5kmの直近のベストが21分00秒の方は、4分28秒/kmが閾値走の設定ペースとなります。

実際に閾値走をする際は、①心拍数と②Tペースをどちらも確認しながら走るのが良いと思います。

【実践】閾値走のやり方

ここからは、筆者が実践している閾値走のやり方を紹介します。

ステップ①:ウォームアップ

ウォームアップでは、軽いジョグや動的ストレッチを5分間行なっています。

心肺機能に刺激を入れたり、関節回りをほぐす意識でやっています。

体が温まったら、本練習に移ります。

ステップ②:本練習(設定ペースで20分間)

上記で求めた設定ペースで20分間走ります。

私は、設定ペースから±5秒の範囲に収まるように意識してやっています。

つまり、4分30秒/kmが設定であれば、4分25秒~4分35秒であればOKとしています。

ただし、心拍数が85~90%を超えてしまう場合は、範囲に収まるようにペースを落として調整しています。

ステップ③:クールダウン

5分間軽くジョグをしてから、静的ストレッチをするようにしています。

私は、体内の乳酸を除去し、トレーニングで硬くなった筋肉をほぐす意識でやっています。

閾値走が20分で十分な理由

ここまで読んだ方の中には「これだけメリットがあるなら、閾値走を25分とか30分やったほうがもっと効果があるんじゃないの?」と思った方もいるかもしれません。

結論から言うと、月間走行距離が200km以上でないなら20分間の閾値走で十分です。

閾値走を20分以上やらない理由は、走行距離を稼げない会社員や主婦の方は、これだけの時間Tペースで走れば十分に効果が得られるからです。

20分以上やったとしても、無駄に疲労するため超回復による走力アップが妨げられると、筆者は考えています。

ダニエルズのランニング・フォーミュラにも、ほとんどのランナーは20分走れば十分という記載があります。

私は原則としてテンポランニングの上限は約20分としているが、力があれば、20分1回で終わらなくてもよい。つまり、十分にトレーニングを積んだランナーなら、1回の練習のなかで、20分間のTランニングを2回か3回走ってもかまわない、ということだ。ただし、ほとんどのランナーにとっては、通常1回だけで十分である。

ダニエルズのランニング・フォーミュラ 第4版(p.61)

筆者もこれに則って、閾値走は20分間で行うようにしています。

【リアルな本音】私が実際に閾値走をやって感じた注意点

筆者が実際に閾値走をやっている中で気付いた注意点を紹介します。

先ほどペースの目安として「心拍数」と「VDOTのTペース」を挙げましたが、実際に走る際はこの両方を目安にします。

例えばVDOTで求めたTペースが「4分30秒/km」だとしても、実際に走ってみると心拍数が「85〜90%の間」に入っていないことがあるからです。

注意点①:閾値走は距離ではなく時間で管理する

以下は筆者の閾値走の失敗例です。

この例では、閾値走を5km、設定ペースを4分30秒/kmで実施しています。

悪い点の1つ目としては、閾値走を距離(5km)で区切っていることです。

距離で区切ると、毎回の刺激時間が変わってきてしまいますし、疲労も大きくなってしまいます。

実際にこの練習の後、かなり疲労がたまっていたため、翌日は完全休養にしました。

閾値走は20分で十分効果があることがわかっているので、練習を継続していくためにも、疲労を最小限に効果を最大化していくことが、走力アップには大事です。

注意点②:最大心拍数の85~90%を確実に守る

悪い点の2つ目は、後半の心拍数が最大心拍数の90%を超えてしまっていることです。

筆者の最大心拍数は、GARMINの光学式心拍計で204と出ています。

よって、最大心拍数204の85~90%は173~184となります。

設定ペースは「4分30秒/km」なので守れていますが、心拍数は85〜90%の範囲を超えてしまっています。

これはつまり、この時の体調では設定ペース「4分30秒/km」は、Tペースを超えているということを示しています。

ペースを多少下げてでも最大心拍数の85~90%の範囲に入るようにするべきでした。

心拍数が範囲内にあるかを確かめながら、ペースを柔軟に変えていくことが重要だと考えます。

閾値走の質を爆上げするための「必須のガジェット」

閾値走の効果を得るには、正確にペースと心拍数を管理する必要があることがわかったと思います。

そして、ペースと心拍数の管理には、GPS機能付きのランニングウォッチが必須です。

私が普段ペースをリアルタイムで確認するために愛用しているウォッチは、「GARMIN Forerunner 165」です。

これよりさらに上位の機種がいくつかあるのですが、この165も多すぎるほどに機能が備わっているので、私はこの165で十分だと思います。

ただ、心拍数に関しては、走り始めやインターバル走の心拍数グラフを見ると少し怪しいところがあります。

手首で測定しているので、精度は仕方ない部分もあります。

もっと正確に心拍数を管理したい方は、胸ベルト式心拍計「GARMIN HRM 200」をおすすめします。

まとめ

今回は閾値走について、実際に取り組んでいるからこそ出せる情報を紹介しました。

最後に、この記事の内容をまとめます。

まとめ
  1. 閾値走は全力で1時間走ったときのペースで20分間走るトレーニング
  2. 継続することでマラソン後半の失速を抑えられる
  3. ペースの目安は「最大心拍数の85~90%」と「VDOTから求めたTペース」

閾値走は、最初はキツさを感じるかもしれませんが、続けていくことで各距離のマラソン巡航ペースが今までより楽に感じられるようになります。

ぜひ明日の練習から試してみてください。